西東 たまき
(更新)
「the」の発音は、次に来る単語によって変化するということを学校で習ったのを覚えているでしょうか。
授業で習って以来あらためて考える機会があまりなかったかもしれません。
ですが、どんなときにどう変わるのかについては明確かつシンプルな「ガイドライン」があるので、迷うことはありません。
本記事では、「the」の発音について具体的に説明していきます。
まずは「the」を含む冠詞についておさらいしてみましょう。
英語では、日本語にはない「冠詞(article)」という言葉を使います。具体的には「a/an」と「the」ですね。
どちらもその後に続く単語次第で、スペル(a/an の場合)または発音(the の場合)が変わるという特徴があります。
冠詞について基本を確認したところで、本題の「the」の発音の使い分け方について見ていきましょう。
普段は「the」を「/ðə/ザ」と発音するのが基本ですが、「aeiou(アイウエオ)」の音の前では「/ði/ジ」に変わります。
どちらも[/ð/]の音で始まり、画像のように舌の先端を前歯で挟んで喉にある声帯を使って声を出します。
実はこれ、日本人が苦手とする「th」の発音[/θ/]の「有声音」。「有声」だから声帯を使うわけですね。発音をするときは、喉がしっかり震えていることを手で確認してもいいかもしれません。
それぞれ、[/ə/]と[/i/]の音があとに続いていますが、[/ə/]は「ア」とはっきり発音するのではなく、リラックスした音になります。「はぁ」とため息をついたときに出る「ぁ」のような音と覚えておくといいですよ。
[/i/]はこのように前にほかの音がある場合、日本語の「イ」と同じ発音をします。基本がわかったら、実際に「the」を使った例文を口に出して読んでみましょう。
「ちょうどその記事をインターネット上で読んだところだよ」
→I just read the(/ði/ジ) article on the(/ði/ジ) internet.
「『アリとキリギリス』のストーリーを覚えているかい?」
→Do you remember the(/ðə/ザ) story of “The(/ði/ジ) Ant and the(/ðə/ザ) Grasshopper”?
「この農家では、ニューヨーク市で人気のオーガニックジャムを作っています」
上の例に出てきた単語を分かりやすくまとめるとこうなります。
こちらの動画でも、母音と子音の前の「the」の音の違いを確認できるのでチェックしてみましょう。
さて、ここまで説明してきた使い分け基準には一つ例外があります。
それは、「the」は、強調したいときに発音が次のように変わるということ。
「the」を強調したいときは thuh(/ðə/ザ) と言うべきところでも thee(/ði/ジ) と言うのです。
リスニングをしてみると分かる通り、普段「the」の音はあまりはっきり発音されないので、しばしば聞き取れないほど曖昧です。
けれども、強調したいときはしっかりと聞き手の耳に音を届けなくてはなりません。
thee [/ði/] のように長く発音すれば存在感を高めることができるので、聞き逃されなくなりますよね。
このような発音の運用を知っていれば、リスニングのときに「この場違いな『ジ』の発音って何だろう?」と思うことがなくなります。
母音の前で変化するという「the」の発音の使い分けは、普段の会話では必ずしも守られているものではなく、基準通りに変化させないと間違いとされるわけでもありません。
「基本的には」といったスタンスですので、thuh(/ðə/ザ) と thee(/ði/ジ) の発音の区別が付いていないネイティブの会話を聞くこともあるでしょう。
そもそも、強調のとき以外の「the」は、thuh [/ðə/] にしても thee [/ði/] にしても判別が難しいほど軽く流すように発音されていることが多いので、堅苦しく考える必要はありません。
けれど、母音の前で thuh [/ðə/] が thee [/ði/] になる方が単純に発音しやすくなることもあります。
今回は、誰もが知っているようで意外と奥が深い「the」の発音についてご案内しました。
「the」の発音の区別 thuh(/ðə/ザ) と thee(/ði/ジ) に関しては厳しいチェックは入りません。
ただし、強調のときは thee [/ði/] のように変化するということを頭に入れておくと、リスニングのときの「?」が減ります。
スピーキングのときは、大事なポイントを強調するテクニックとして覚えておくと「より意図が伝わる話し方」ができますね。